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事務所コラム

名刺はどちらに渡しますか

2020.04.14

吉川 賀恵

少し前のことですが、二人の子供を連れて、夫とともに、家をいくつか見て回る機会がありました。どの物件でも、担当の方が、とても丁寧に家の状況を案内してくださいました。ただ、必ず、夫にだけ名刺が渡されることは、不思議でした。

 

 そこで、まず、夫に名刺が渡される理由を考えてみました。家を買うのは大金であり、その原資になるのは、夫が稼いだお金であると考えるからでしょうか?

 

我が家の場合、私は弁護士として稼働をしていますので、「夫が稼いだお金」という点は誤っています。しかし、私が違和感を覚えたのは、私が働いているからでは、ありません。

仮に私が働いておらず、いわゆる「専業主婦」であったとしても、「夫が稼いだお金」という発想が誤っているように思えたのです。

 

家庭での家事労働は、経済的に無価値では、ありません。仮に、家事を外注すれば、相応の支出がかかってきますし、家事労働を行う者がいるからこそ、夫は家事に時間をかけず、仕事をする機会が得られているのです。裁判上も、同様の考えに立っており、専業主婦の方が交通事故の被害に遭った際にも、休業に対して補償がされています。

 

もしかすると、担当の方は、夫が家を買う最終決定をすると想像したのかも、しれません。しかし、「戸主」なる制度が存在した昔とは異なり、現代では夫婦で相談して家を買うことが多いように思われます。

 

当事務所に夫婦で相談に来られたとき、私は、まず、相談をされる当事者の方に、名刺をお渡します。女性であるか、男性であるかは、関係がありません。そのうえで、もうお一方にも、「念のため」と名刺をお渡ししています。

 

男女格差を図る一つの指標とされるジェンダーギャップ指数。2019年12月の発表で、日本は153か国中、121位です。弁護士として、取り組むべき課題の一つであるように思います。

 

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