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事務所コラム

ベニスのため息橋に想う

2018.05.09

吉川 正也

イタリア旅行で、16世紀の刑事裁判の雰囲気を味わってきました。

 

 ベニスにあるドゥカーレ宮殿は、歴史的建物で、建物内部には、多くの美術品や、廊下の天井まで装飾された黄金の階段など、豪華な宮殿です。

 

 この宮殿内部に、裁判所があり、裁判で有罪判決を受けた被告人が連行されていく秘密の通路や、裁判所の壁の一部がこの通路に通じる隠し扉になっていることを知りました。16世紀にすでに、弁護人の立会する裁判が行われ、弁護人席には、大きな机が用意されていました。

 

 刑事裁判で捕らえられた囚人は、宮殿内部にあるこの裁判所で弁護人の弁論を受け、裁判に臨んでいたのです。

 政治事件の被告人が、有罪となると、裁判所の内部の通路を通り、宮殿の建物から外に出て、水路を隔て、監獄に移ります。

 

 そのときに、宮殿内の裁判所と監獄を結ぶ橋を通って、連行されます。この橋は、水路の両側にある宮殿と監獄のそれぞれ2階あたりで、水路の上にかけられています。橋は、トンネル状で、天井も囲われているので、小さな窓からしか、外が、見えません。

 

 それでも、この橋を通るときが、その囚人にとっては、ベニスの港、町並み、空を見る最後の機会なのです。

 この時の状況を思いうかべた詩人バイロンが、この橋で囚人が最後のベニスの風景をみて、ふと、ため息をついただろうということで、ため息橋と名づけたということです。

 

 この橋は、宮殿内部の裁判所の隣室にある弁護人控室からもみえます。

 時の権力者に、政治的に対立した政治犯に対し、その時の弁護人がしっかりと、弁護人の役割を果たしえたのかと、思いました。

 それは、弁護士控室が、裁判所の法廷ほどきらびやかではないにしても、寒々とした監獄と比べ、十分、暖かい部屋であり、そんなことが、私には、気になったのです。

 

 弁護士として、やはり、毅然として、一つ一つの裁判を行うことが、必要ではないかと、改めて思ったのです。

ベニスにいて日本に戻ったら、しっかり裁判を行っていこうと確認をした次第です。

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