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国選刑事事件
2016.10.05
吉川 正也
私のように、弁護士歴が長くなった者が、国選刑事弁護人になることは、少ないようである。
刑事事件は、警察署や拘置所に、被疑者あるいは被告人に面会に行ったりしなければならない。被害弁償を行ったりもする。中には、弁護人に何から何まで要求をしたりという者もいる。そのようなことが続くと、確かに、国選事件は卒業という弁護人も出てくる。
それでも、被告人にとっては、その弁護士しか、被告人の立場で弁護をできる者がいない。だから、そこには、一定の人間関係ができる。昔から言われているとおり、どんな被告人にも、弁護すべきところはある。
この間の刑事事件は、ごく刑の軽い事件であったが、長く勾留をされ、その上で、正式な裁判となった。裁判官は、検察官以上に厳しく質問をしていた。
求刑があり、私も、被告人の行為、反省等を述べて、寛大な判決を求めた。
裁判所は、求刑10万円に対し、同じ10万円の判決とした。そのうえで、裁判官は、未決勾留日数を1日5000円に換算し、これに充てると述べた。
結果として、被告人は、罰金を納めることもなく、即時釈放されることになった。
裁判官が、厳しい質問をしていたのは、何もなしに釈放したのでは、また、被告人が事件を起こす恐れがあると考えたためであった。
ごく小さい一つの国選事件にも、一つの物語がある。
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