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事務所コラム

美唄(びばい)の彫刻

2014.06.02

吉川 正也

札幌駅の玄関入り口に、大理石の彫刻がある。イタリアから、この大きな石を運び込んできたもので、大理石は、人の皮膚のようにツルツルに磨き上げられている。まん中に大きく開いた大理石の屏風という感じである。

駅の入り口にあるこの大理石は、ここから出発する旅人のための出発の門であるし、また、札幌に戻った人を迎える門のような気もする。

待ち人を待つ人の出会いの目標となったり、子供らにとっては、自分で触って、まん中あたりの大きな穴を出たり入ったりできる大きな遊び道具でもある。

 

この門のような芸術作品を作った人が、美唄(びばい)出身の安田侃(かん)という芸術家であることは、ずいぶん後に知った。

美唄市は、美しい貝のとれるところということで、産業としては石炭鉱山で栄えた町である。この炭鉱の町で育った安田氏は、イタリアの大理石の白さと、美唄における冬の雪のなかの暮らしとが結びついた。

具体的な作品ではない。抽象的な作品である。だからこそ、手にふれたりさわったりして感じる。ごつごつした大理石の感覚。一方、つるつるになってみがき込まれ、ひんやりとした大理石。なめらかに波をうっていく冬の雪原のような曲線。こうしたものから、大理石と冬景色がつながっていることも感じとれる。

 

作品群の展示場は、美唄市内の元小学校の校舎、校庭を利用しているところにある。自然の丘や山を借景している。四季折々の姿で、彫刻と一体となる。配置されている大理石の彫刻は、その時々の観る者によって、色々なイメージとなる。

とにかく、これらの石の作品は、これから時間を超えて残っていく。そのことを想像しながら、この息の長い作品を作り出した安田氏の精神を想う。

 

日々の暮らしの中で、忙しさに負けこしないで、人々に、本当に役立つことは何かを、改めて、感じさせられる。美唄の作品群には、春夏秋冬を通じ、時々会いに行きたいものだ。

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